なんでもよくおぼえてる

人生はからっぽである

震える魂よ 肉体に宿いし友よ

淀川のはるか向こうの空港に、旅客機が降りていく。仕事の合間に、空港の方を見るのが、とても好きだ。実際は高速なはずだけど、会社の窓から見る機体はとてもゆっくり下降している。風船みたいに、ふわふわと。
わたしがよく知ってるかもしれない、あるいは、会ったことはないけど知っているかもしれない、または、わたしは知らないけどわたしのことを知っているかもしれない、いろんな人が、きっとあの飛行機にのっている。

今度、わたしが飛行機に乗って伊丹空港に降りるとき、遠くから見ている自分の視線を想像してみようと思う。地上にいても空中にいても、結局はどこにもいないような気が、いつもしている。

1月21日(月)
夜から雨になるという天気予報を知っていたのに、傘を持たずに出てしまう。おかげで、帰りは、駅から自宅まで、ぬれながら走る破目になってしまった。こんなことでもないと、全力で走るなんて、最近とんとなくなってしまった。自分の全速力って、いったいどれくらいなんだろう。50m、何秒で走れるんだろう。昔は何秒で走ったんだろう。

帰りの地下鉄で『新潮2月号』に一挙掲載された黒川創『暗殺者たち』を読了した。なんと、面白かった。一気に読んでしまった。アナキストたちは、思想をかためて昇華させていくよりもむしろ自分の感情に溺れコントロール不能に陥って、ほとんど自滅したかのように見える。その中で大石誠之助の真摯さが際立って、胸をうつ。

夜は、『映画秘宝3月号』のはくさいアワードを読んで笑う。けっこう気楽。わたしは、町山智浩ラース・フォン・トリアー批評に全面的に賛成する。とにもかくにも早いとこ、『ジャンゴ 繋がれざる者』、観たいわあ。

1月22日(火)
雨。出かける時間、もっとも強く降る。会社に行くなという天のお告げでないかと思う。

お昼ごはんは、お手製お弁当。ミートローフとキャベツの炒めもの、葱入り卵焼、千切り大根と人参の煮物(作り置き)、ミニトマト、ごはんの上にかつおのふりかけ、漬物。これに水筒にいれた熱いほうじ茶とみかん。しみじみと美味しい。
昼のお供は『暗夜行路』。全然だめ。『冬の本』で山本さんが取上げていて、なるほどなかなかよさそうだ、と読みはじめたはいいが、全く面白くなくて、ほとんど苦痛を覚える。内容は辛気臭いし、文章は短く簡潔なのに読みにくく、わたしにとっては鬱陶しいだけな志賀直哉。山本さんの紹介が上手すぎるんだよ。あまりの馬鹿馬鹿しさに前編で止める。

本日も2時間ほど残業。今年の目標は定時退社と月一回の有休取得、なんだけど、達成するのは至難と思われる。
雨上がりの梅田の夜空を見上げれば、光を点滅させながら、飛行機が西へ下りていく。あんな高い空にたくさんの人間がいる。よくよく考えれば、飛行機ってすごい発明品のように思える。ヤマト宅急便がアマゾンからの荷物を持ってくるため、急いで帰宅。家にある野菜と肉を放り込んでカレー鍋。ビールの後、赤ワインを2杯ほど飲む。

アマゾンから届いた『SUPER FOLK SONG』のDVDを観る。