なんでもよくおぼえてる

人生はからっぽである

天に昇る竜は雨に煙る

社員旅行で、天の橋立に行く。バスで。日帰りで。連休中、他の日は全て完璧に晴れていたのに、この日だけ、すごい雨。何の暗示だろうか。
天の橋立に行ったのは、大学1年か2年のとき、女友だちと4人ほどと連れ立って、蟹ツアーを組んで以来だ。あの頃、わたしは免許取得したてで長く運転したくてうずうずしてて、JRAのバイトでがっぽり儲けて、キャッシュで買った中古のマーチをビャーツと運転して、蟹をたらふく食べに行った。わたし達はなにしろ暇だったし、悩みも特になかったし、将来ことなんか考えてるどころか、そんなものがあるなんてことを想像もしてなかったかもしれなくて、誰ひとり彼氏もいなかったけれど楽しくて、車の中でMr.BIGなんか聴きながら、どうでもいいことでギャアギャア笑っていればよかった。
大学生のわたしが歩いた天の橋立の展望台は、昔のことはよく覚えてないけれど、たぶん変わっていない。時代に取り残されたような、100円入れると動き出す望遠鏡や、股のぞきの台も。ガタガタで、今にもバラバラにこわれそうな、ケーブルもリフトも、まだちゃんとあった。大学生だったわたし達とちょうど同じくらいの歳の男女が、雨がそぼ降る中、展望台のぎりぎりまで身を乗り出して、傘を振り回してふざけあっていた。
旅行がどうの、コミュニケーションがどうしたということよりも、自分で自分の記憶を辿っているのが一番面白かった。
出石にも寄ったので、母への土産に出石そばと、帰りのバスの抽選で但馬牛のハンバーグが当たったので、それを自宅の土産にする。