なんでもよくおぼえてる

人生はからっぽである

偽の美

午前6時半に目覚める。疲れて、体が鉛のように重い。会社に行きたくない、働きたくない、と切実に思うが、きっと今日も元気に明るく働いてしまうだろう。
朝食は、トーストと、珈琲。バナナがないので、りんごとヨーグルトを食べる。いつまでバナナの品薄は続くのだろうか。みんな早くバナナのことはすっかり忘れて、他のことに夢中になってくれ。それともバナナにメラミンが含まれている疑いでもあれば、買い占めるのを止めてくれるだろうか。
急いで仕事を切り上げ、今日も病院へ。5月の末からこんなことをくり返しているわけだが、大阪京都間を電車で往復することが増えたおかげで、読書の時間がとれてうれしい。母が病気になった時は断崖絶壁に立たされているような気になってくらくらしたが、どんなに苦しい状況の中であっても、それなりに面白いことは見つけられるものだ。『人間はどんなことにも慣れるものだ』というのは、『異邦人』のムルソーのお母さんの言葉だ。『人は完全に不幸になることはない』
今日は、『池澤夏樹の旅地図』という本を読んでいたが、写真も豊富でカラーページも多いため、持ち運びが重くて閉口した。
母は、昨日より元気そうだった。昨日、わたしが怒ったためか、愚痴も減り、ごはんもちゃんと食べたようだった。何もなければ明日退院できるとのこと。
20時半すぎに、病院最寄の京阪の駅に着く。この駅の掲示板にはいつも「世界の名言」というのがチョークで書いてある。先月はスタンダールだったか、モンテーニュだったかで、どんな言葉だったか、控えるのを忘れた。今月はシラーだった。シラー。シラーはドストエフスキーが影響を受けた作家だ。わたしはそれをあの時…、と思い返していたら、電車が来てしまい、その言葉までは書きとめられなかった。各駅停車しか止まらない小さな駅で、シラーの名前を見られてうれしかった。今日はけっこううれしいことがあった。
帰宅して、23時頃からやっとごはん。簡単なうどんすきとビール。