なんでもよくおぼえてる

人生はからっぽである

ソウル・トレイン

晴れ。出遅れて電車で。土曜日なので、比較的空いている。
サラ・ウォーターズ『夜愁』(創元推理文庫)を読んで行く。なぜか、わたしはこの小説が好きなのだ。どうにもならない何かを諦めるには、どうしたらよいのだろう。もがくしかないのか。唇をかみしめて痛みに耐えるしかないのか。

ケイはきびきびと歩いた。ミッキーに見られているかもしれない。けれども、角を曲がるとすぐに歩調を落とした。ウェストボーングローヴの商店街にはいって通りが賑わいだすと、壊れた塀の陰に踏み段を見つけて腰をおろす。ミッキーに言った言葉が頭によみがえり、もしも手を伸ばして歩いたら、と行き交う人々の顔を眺めて考える。あなたは何を失った?あなたは?どうやって痛みに耐えている?あなたはどうやって耐えているの?

通常どおり、仕事はこつこつと普通にこなす。錆びて使いにくくなったので、ハンズで新しいキッチンハサミを買って帰る。