なんでもよくおぼえてる

人生はからっぽである

かじかんだ手のひらをあわせる

寒い。ラジオをつけたら、今日は11月中旬の気温です、などと言っている。わたしは寒さに弱いので、そんな言葉を耳にしただけで、コートを着込みたい気分になる。しかし、引越して以降、秋冬物は、どこに仕舞ったものか生活圏内で見かけたことがないので、着込むことができない。仕方がないから、マフラーをぐるぐる巻きにして出かけた。9月末にマフラーぐるぐる巻きとは、マフラー史上最速ではないだろうか。
昼になっても寒く、また、地下の社員食堂は、すきま風が足元からスースーと入り込むので、輪をかけて寒い。マフラーを巻いたまま、うどんをすする。この食堂のうどんの出汁は何故にこうも薄いのか。味が全然しない。仕入れているスープの濃縮倍率を間違えているんじゃないかと思う。負の食事だ。人生は短いのだから、こんなでたらめなものを食べている時間はない。
帰りは雨降り。歩くのはやめて、地下鉄に乗る。病院の母にも電話。点滴がはじまったことと、病院の食事がまずいという話をする。ほうれん草のおひたし出たけど、硬く絞りすぎやねん、ほんでゴマかかってる以外では、なあんにも味がないんやで、と怒っていた。わたしと母はあまり似たところがないが、こういうところは似ているかもしれん。
夕食は、鶏の塩焼き、ごぼうとにんじんと豆の煮物、わかめときゅうりの酢の物、ごはん、ビール。
蓮見重彦『映画論講義』(東京大学出版会)を読む。ラース・フォン・トリアーはつけあがっている、というくだりに笑う。