なんでもよくおぼえてる

人生はからっぽである

河出書房新社の日

晴れた一日。
四天王寺古本市で、1970年に河出書房新社から出たロレンス・ダレル『ジュスティーヌ』『バルタザール』『マウントオリーブ』『クレア』の4部作を値切って買う。鉛筆ですこし書き込みのあるものは1000円、他は1200円くらいの値がついていたが、4冊で4000円にしてもらえませんか、と店主のおじさんに頼んだら、いいですよ、と快くまけてくれた。ええ人はどこにでもいる、というか、ええ人は自分でつくれる。
ロレンス・ダレルの『アレクサンドリア四重奏』は、ずっと読みたくて読みたくて仕方なかったが、昨年改訳され復刊したものは、装丁に気持ちがのらなかったことと、価格もネックになって買えずにいた。今日、手に入ったものは、河出のモダン・クラシックスのシリーズで、『本シリーズは新奇を追わず、既成の評価に偏らず、正当に読書家の要望に応えるべく、製作年代、ジャンル、流派の別を超えて確固たる文学的真実を創造し得ている秀作を厳選します』と宣言されているもの。装丁もシンプルでよい。しかし、『文学的真実』とは何だろう。
気をよくして、ぶらぶらと家へ戻り、ニラ焼きそばを作ってビールを飲み、常備菜として、ひじきの煮物と五目豆をこさえて、『ジュスティーヌ』にあった書き込みを消しゴムで丁寧に消し、干していた布団を取り込み、それを枕にグーと昼寝をして、夕方また難波に出かけた。
タワーで、スサンナ・カロリーナ・ヴァルムルーのソロアルバムを見つけて購入。ジュンクで、結局毎月買うことになってしまっている、河出世界文学全集『アルトゥーロの島/モンテ・フェルモの丘の家』を手に入れて、うれしい。エルサ・モランテとは、どのような小説を書く人だろう、初めて読む作家なので、ワクワクする。
近所で、イタリアの赤ワインを仕入れて、豚肉のソテー、ジャガイモとたまねぎのガーリック揚げ焼、トマトとキュウリで夕食。
夜になって、明日会社の人事に提出しなければいけない書類書きにやっと手をつける。お尻に火がついて、熱いなあと思いながらも慌てられず、やがて身体にも火がまわってもうどうにもならなくなってはじめて、のろのろと火消しの水を汲み始めるという感じだ。夜中に仕上がる。