なんでもよくおぼえてる

人生はからっぽである

スーツを着る


久々にスーツを着て、ヒールのある靴を履いて、出勤。カツカツと音を鳴らして、アスファルトを蹴っていると、自分が歩いているのではないような、錯覚に陥る。
午前中に面接。眼鏡でオールバックの人事部の男と、1対1で30分ほど。先日受けた試験のフィードバックがあって、適性テストに基づく性格診断みたいなのをしてくれて、日ごろ自分に対して「こいつ何考えてんねん」といらいらしている身にとっては、とても興味深かった。わたしは、『欲がなく、競争意識が希薄で、慎重さに欠け、他人に興味がなく、頑固で、しっかり自分の考えを持ってはいるがそれを人に強要しようとしない』人間らしい。ふーん、なるほど。あなたはね、すぐに競争を避けようとする、しかし、これからあらゆる場面で人と競わねばならない時も出てきます、その時に逃げないようにしなければなりません、と言われて、部屋を出てきた。わたしは逃げるだろうな、と思う。何かと競って勝ったり負けたりすることに、昔からどうしても興味が持てないのだ。
とにかく、嫌なことが終わってほっとした。退社後、先日購入した『アレキサンドリア四重奏』に巻きつけるパラフィン紙を買いにいく。本に巻いてあるパラパラのこの紙のことを、わたしはずっとパラフィン紙と思っていたのだが、東急ハンズで聞いてみると、ああグラシン紙のことですね、と言う。グラシン紙と言うのか。しかしそのグラシン紙は品切れだった。古本屋が買占めたのか。では、と、心斎橋のKAWACHIへ行って、グラシン紙はありますか、と聞くと、ああ硫酸紙のことですか、と言われる。硫酸紙とも言うのか。知らんかった。果たしてその硫酸紙はちゃんと在庫があって、手に入れることができた。めでたい。
夕食は豚と瓜のガーリック風味のパスタ。冷蔵庫の残り物の処理。
夜に、硫酸紙(グラシン紙)を本に巻く。白いフィルターのかかった書物は、どこか儚くうつくしい。