なんでもよくおぼえてる

人生はからっぽである

鳩とサンドイッチ

朝方は雨だったが、出勤時には止む。そのまま一日中、もう雨は降らなかった。
煩雑だった仕事が少しましになる。まあ、これは今から思えば文字通り嵐の前の静けさだったわけだが、もちろんこの時はわかるはずもなく、素直に余裕を持って働けることを喜んでいた。
昼休みは、同僚のみんなと離れて、ふらっと会社近所の公園へ。昨日、公園のベンチでしばし座って考えにふけっていたのが割合楽しかったので、今日も同じようにしてみたいと思った。とにかく、いつでも、一刻も早くひとりになりたい。周りの誰もがわたしを知らない場所に行きたい。どこの誰でもない、何でもないものになりたい。
御堂筋や四ツ橋筋の間に伸びている小さな道で、ひっそり商売をしているお弁当屋さんで、卵とハム、きゅうりとトマトのサンドイッチを買って、公園で食べた。ベンチは昨日の雨で少ししっとりしていたけれど、座ってしまえば気にならなかった。勤め人と思しき人々が数名いたが、13時にさしかかっているせいかまばらで、人間より鳩の数のほうが多かった。サンドイッチは、さっぱりしてて、マスタードがきいていて美味しかった。
珈琲をすすりつつ、『フランク・オコナー短編集』(岩波文庫)を読む。この作家が読むの初めてだなあ、と思っていたのだが、中の『国賓』という1編は覚えがあり、家に帰って調べてみると、『アイルランド短編集』に入っていたのだった。アイルランドの文学は、アイルランドの音楽やビールほど好きなわけでも詳しいわけではないが、フランク・オコナーは子供を描くのが上手い。
夜、ラジオで、辛気臭いクライマックスシリーズの試合中継を聞きつつ、本棚の整理など。ABCラジオ福本豊の解説は本当に、心底、やる気がなくて面白い。さあ、どうなるやろねえ、どうなるんかなあ、などと全くひとごとで、解説の態になっていない。しかし、「タイガースナイター」と称して、ドラゴンズ×Gの実況をしなければならない、この悲哀よ。