なんでもよくおぼえてる

人生はからっぽである

忍耐と想像力

朝晩は、ピリッと寒くなった。わたしがいつも起きる時間である、午前6時の空気はかなり冷えている。鼻の頭を触ると、ひんやりと冷たい。一生寒くならないのでは、と思うほどの暑い夏であったが、やはり季節はまわってくるのだ。
通勤途中、歩きながら、病院にいる母に電話。今度の病室は、明るく、寝転んでいても窓から空が見え、大文字も京都タワーも見える、と言って、ご機嫌だった。相変わらず、ご飯は美味しくないらしいが、美味しいものを食べるために入院するのではないのだから、それは我慢するしかない。今日は、薬の投与の日だ。滞りなく終わってほしい。
島尾伸三『小高へ』を読む。親と子とは、なんと特殊な関係であることか。それから、落語特集の『男の隠れ家』という雑誌もパラパラと。こんな雑誌、生まれて初めて読んだ。まあまあ記事がしっかりしているので読めた。『サライ』のような、どうしようもなさはない。
帰り道、母に電話。治療は特にトラブルなく、終了したらしい。19時には、ノルマの点滴は全て終了していた。暇にまかせてテレビを観続けているせいか、えらい株安やねんなあ、などと、普段全く興味も示さない、経済ニュースにまで言及していた。母の病室から見えているであろう、京都の景色を思い浮かべつつ、大阪の坂を踏みしめてあがる。東京も、ここみたいに寒くなってきたんだろうか。わたしはあの人が見ている景色がどんなか、何となく想像することができる。そのことを少しだけ、シアワセかなと、思う。