なんでもよくおぼえてる

人生はからっぽである

宴にようこそ

サントリーミュージアムに、『青春のロシアアヴァンギャルド展』を観に行った。
とにかくニコ・ピロスマニの絵が観たかった。会場に入ると、急ぎ足で、ピロスマニの絵を集めた部屋に向かう。
ピロスマニは、絵がへたくそだ。たぶん、ちゃんと絵画というものを勉強したことはないのだろう。色はべたっとしているし、平面的だし、モチーフも限られている。本人もそんなことは百も承知だと思う。それがどうしたの、という強さがある。上手く描く必要なんかあるの、上手なだけの、きれいなだけの、小手先でこねくりまわしたような絵を死んだって描くものか、と思っていたような気がする。ピロスマニの絵を眺めていると、そう思って、愉快になる。
ピロスマニの人物の特徴である、ぐりぐり眼のバールの主人が、葡萄がぶら下がっている木の下で、黒パンとワインの瓶をのせた盆を持って立ち、その下に、くねるようにうねっているグルジアの文字が書き付けてある絵を、ミュージアムショップで買った。これは、先日ホクホク気分で手に入れた画集には掲載されていなかった。後日、ハンズでフレームを買って、玄関のドアの前に吊り下げた。ただいま、とドアを開けると、そこにピロスマニの絵が迎えてくれる。素晴らしい。